恋人~あの日聞いた花の咲く音~

2025/06/22

どらま・えいが



全く何の前知識もなく見始めた。
ひとりの両班(上流階級)のお嬢さん(ユ・ギルチェ)が自分の美貌を武器に男たちに愛想をふりまきつつも、親友の彼氏に横恋慕するという、くそおもしろくもなく、感情移入のできないストーリーで、見るのをやめようかな~と思ったが、ちょっと待て、なんだか既視感が…。
あ!これ!『風と共に去りぬ』じゃん?!私は『風と共に去りぬ』は大好きな映画なのに、この『恋人』に対する拒否感はなぜ?まあ、もう少し見てみるかと、月~金曜、毎日一話ずつの放送を見続けてみたら…。

ただの軽い恋愛ドラマではなかった。1936年に起こった丙子の乱をモチーフにした過酷なドラマだった!『風と共に去りぬ』は南北戦争だったが、『恋人』の方が描き方が結構ハードで観るのもつらい場面が多々あった。その中で、嫌悪感しか持てなかったただの両班のお嬢さんが強くたくましく成長していく姿を、いつしか応援している自分がいた。
もちろん、ギルチェと謎の男(イ・ジャンヒョン)との切なくも確固たる恋模様も抜群に良かった。が、タイトルも含めて恋愛を前面に押し出さない方がこのドラマに合っているのでは?と思った。

このドラマの中で、特に好きなシーンが二つある。一つは、避難先の江華島(カンファド)で敵に殺されそうになり、島を脱出するために船に乗せてもらおうと、助けた王の孫を抱いてギルチェが必死で船まで海岸を走るシーン。迫力満点の大激走で手に汗握るとはこういう時のことだと思った。そして、もう一つは、最愛のギルチェを清の皇女の放つ矢から守るために草原を全力疾走するイ・ジャンヒョン。こちらはもう、哀れなくらいの必死さが伝わって泣けた。

とにもかくにも、途中でやめずに最後まで見て良かった。あの冒頭の、美貌と男たちにしか興味のない呑気で浅はかなお嬢さんのシーンは、その後の壮絶な展開のためには超必要であることが最後まで見るとわかる。今まで見た韓国ドラマの中でも、上位に入る良いドラマだった。