『如懿伝~紫禁城に散る宿命の王妃~』観了。先に死んだ者勝ち。

2026/05/26

どらま・えいが


清の乾隆帝の時代の権力争いが渦巻く後宮物語。全87話。
とてもおもしろかった。
中国ドラマを観たのは、『風起隴西-SPY of Three Kingdoms-』『三国志〜司馬懿軍師同盟〜』『瓔珞〜紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃〜』と続いてこれが4作目。
どれも、お金をかけて作られたドラマで見応えがあった。

『如懿伝~紫禁城に散る宿命の王妃~』で私の心に響いたポイントは4つ。
1、主人公・如懿を演じた女優さんの演技のうまさ
2、深まる信頼関係と、崩れゆく信頼関係
3、男女の愛を越えた情を感じる
4、良いところしか思い出せないということ


1、主人公・如懿を演じた女優さんの演技のうまさ
周迅(ジョウ・シュン)さんという中国ではとても有名なベテラン女優さん。
考えてみたらこれまで見てきた宮廷ドラマにはなかった低音ボイスの女優さんに、最初は少し違和感があったものの、すぐに慣れ、その落ち着いた声と話し方が心地よく感じるようになった。
とにかく、彼女の演技力はすばらしい。
容貌は美人ではないけれど、セリフがなくとも目や表情の微妙な変化で如懿の心情が伝わってくる。
『如懿伝』をほぼ見終わるまで彼女の経歴など知らなくて、すごい女優さんだなと思って検索してやっぱりねと納得した。
そのうち、彼女の他の作品も見てみたいと思う(現代劇でも)。


2、深まる信頼関係と、崩れゆく信頼関係
「信頼」は、このドラマのキーワードじゃないかな。
上司と部下、男と女、友達関係。
乾隆帝は「皇帝は誰のことも信頼できない」と常々言い、唯一、子供の頃からの付き合いの如懿との信頼関係さえも壊してしまう。
権力争いの横行する宮廷では仲間を裏切ることは日常茶飯事で、それがまた簡単に死につながるから、損得勘定をずる賢くできる人でないと出世できない。
そんな中、如懿が濡れ衣を着せられ冷宮(中国の宮廷(後宮)において、罪を犯したり皇帝の寵愛を失ったりした后妃や皇子が幽閉された場所)に追いやられたときに知り合ったのが侍衛・凌雲徹(りょううんてつ)。
その後もずっと助け合い支え合う彼との信頼関係は最後まで崩れることなく、温かい気持ちにさせてくれた。
だからこそ、その残酷な結末には涙があふれる。


3、男女の愛を越えた情を感じる
最初は身分の低いもの同士結ばれるはずだった衛嬿婉(えいえんえん)と凌雲徹。
けれど、美しい衛嬿婉は凌雲徹を捨てて皇帝の寵愛を受ける道に進むんだよね。
まあ、身分の低い男と結婚するより、皇帝の側室になった方がお金に苦労せずに暮らせるし親兄弟のためにもなるのはわかる。
しかしこの人の許せないところは、寵愛を受けることに失敗した時に図々しくも凌雲徹のところに戻ってきて、そしてまた寵愛が得られそうだという時には再び彼のことを平気で捨てるという所業に出たところ。(結局最後は皇貴妃まで上り詰めたのだから大したもんだわ。)
衛嬿婉に振られるたびに落ち込む凌雲徹を、励まし、諭したのが如懿だった。
如懿は仕事に真面目で忠実な凌雲徹を陰になり日向になり応援し、皇帝の御前侍衛にまで出世させることになる。
凌雲徹は次第に、如懿に対して主従関係以上の信頼を寄せ、やがては愛情を持つようになるが、身分も全く違う相手なので、恋愛成就させようなどとは思わず、ただただ如懿の無事と幸せを祈って仕事に精を出す。
しかしそれが元で、皇后・如懿を陥れようとする玲妃(衛嬿婉)の策略にかかってしまい、二人は大ピンチとなってしまう。
乾隆帝に不倫の疑いをかけられ、もう凌雲徹を如懿が処刑する意外に乾隆帝の信頼を回復させる術がないとなった時、それを拒否する如懿に代わって、親友の楡貴妃(ゆきひ)・海蘭(はいらん)が独断で決行する。
その時、何もかも理解し受け入れた凌雲徹が最後に如懿に伝えたい言葉は「どうか息災で」だったが、本心を海蘭に聞かれた時に「男女の愛を越えた情を感じている」って告白したんだよね。
もう、これがね、じーんと来たよね。
こういうのが、真の愛情なんだなあって。
自分に得るところがないどころか、自分の命がなくなってしまうことになっても、相手を思いやる心。
そう思える相手に出会えた凌雲徹は幸せだったのかなあと考えると、切なくて涙が出るのだ。


4、良いところしか思い出せないということ
乾隆帝が一目惚れをした寒部一の美人・寒香見には恋人がいたが、無理やり乾隆帝の貢女にされてしまった寒香見を追う途中で雪崩に巻き込まれ死んでしまう。
その恋人を思うあまり、自害を試みたり、ずっと乾隆帝には冷たい態度を取ったりする。

乾隆帝は早くに病気で亡くなった初代の皇后・孝賢純皇后のことを、慎み深く、聡明で、従順だったと、皇后・如懿に事あるごとに訴える。

先に死んだもの勝ちだなあって思う。
死んでしまった人との関係は、いつまでも変わらないどころか、思い出は美化されがちで、どんどん良くなっていくんだよね。
死んでしまった人と比べられたって、どうすることもできないから、生きている方は虚しくなる。
死んだ人を引き合いに出すのは卑怯だ。
生きている相手を大切にしたいなら、すべきではないことだ。
そう考えると、寒香見の行動は仕方ないというか、当然か。恨みしかないもんね。
そして、乾隆帝は、本当にお馬鹿さんだ。
結局自分から如懿との信頼関係を失くしてしまったんだもの。


『如懿伝』で一番イライラさせられたのは、乾隆帝の言動だな。
如懿がかわいそうすぎる。
一途に乾隆帝のことを思ってきたのになあ。

「蘭因絮果(らんいんじょか)」の言葉を最後に乾隆帝に伝えた時の、如懿の寂しさはどんなだったことか。
こんなことなら、早くに死んでしまって、相手の心の中だけに住み続けた方が幸せなのかな?って思ってしまうことが悲しい。




「蘭因絮果(らんいんじょか)」
中国の四字熟語で「最初は美しかった愛情や関係も、最終的には悲しい結末や別れに終わること」